折り図考－その３

前述の通り、学研の折り図は（少なくとも私にとって）恐ろしく分かりにくい。

それはなぜか。
通常の折り図は１つのコマが「現在の状態」と「これからの動き」から成るのに対し、学研方式は基本的には１つのコマが「その結果どうなるか」のみで成り立っている。
時間の流れ方が根本的に違うため、通常の折り図でやっていたような、無意識にすらすら読んでいた流れが成立しない。いちいち１コマ１コマぶつぶつ途切れる。ようするに、文法が違うのである。

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折り図は基本的に世界共通である。国や個人によって若干記号に違いがあることもあるが、軽い訛りのようなもので、ほとんど何の説明も要せず理解できる程度の範囲内の差に過ぎない。

これに対して、学研さんの図では、そもそも文法を変えてしまっている。果たしてこれは妥当なやり方なのだろうか？？

この本を手に取った人は気付いたかもしれないが、この本、「著者・まつもとかずや」ではなく「作品協力・まつもとかずや」となっている。さらに、折り図そのものは「編集部が構成」したと明記されている。
この思わせぶりな距離感が一体何なのか、特に言及するまでもないだろう。

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さて、そもそもなぜ文法を変えたのか、と言えば、初心者に分かりやすいように、という配慮によるのは言うまでもない。
しかし、それが果たして妥当か、というと、どうも疑問に思わざるを得ない。学研方式の図が実際に初心者にとって分かりやすいものだったと仮定しても、

• 折り慣れている人にとっては読みにくい
• この折り図に慣れた初心者の方は逆に一般的な折り紙の本をスムーズに読めなさそうな気がする

仮定の仮定の話であるためこれ以上は何も言えないが、異なる文法の図をリリースしてしまったことにより、余計な壁ができるのではないか、と懸念している。
むしろ、通常の折り図について、その読み方を丁寧に解説していくような本というものはできなかったのか、と、思うのだが、どうなんだろう。

世界で折り図の文法（と記号のほとんど）が共通というのは伊達な話ではなく、実際、海外の折り紙の本であっても難なく折れて楽しめるという経験をしたことのある人も少なくないだろう。
しかし学研方式の場合、折り線や矢印がほとんどないぶん、折り方の説明が言葉による説明に強く依存している。文法の違いにプラスして、説明を言葉に頼るという特性上、おそらく日本語の分からない人にとって、即座に理解するのは難しい内容になってしまっているのではないか、という気もしてならない。だとしたら、かなりもったいない話である。

恐らくその壁というのは、単に読む側だけに存在するものではない。
表題からしてもこの本が一発モノとは思えず、シリーズ化しそうな（狙っているような）気配がある。果たして他の作家さん達も学研方式の折り図を何の抵抗もなく容認するだろうか。
逆に、通常の折り図を既に描いている作家さん達にとっては、その（とてつもない労力をかけた）折り図は、本には使われない、ということでもある。ここ最近は（サクッとデジタル入稿できるかもしれない）コンピューター折り図もごく一般的になっており、折り図資産は結構な量になっているだろう。が、このシリーズの本にする場合、その労力は悉く無駄になる。

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学研と言えば、科学と学習のような学習教材の老舗であり、おそらく、どのようにすれば子供にも分かりやすく説明できるか、というテクニックに関しても、かなりの蓄積があるだろう。おそらくは様々な工夫が成されているのだろうが、果たして、という感じである（少なくともまだまだ未成熟に感じる）。
ただしそれも、あくまで折り慣れている私の感覚で見た場合のものであり、もしかしたら初心者や子供の方にとっては、非常に分かりやすい描かれ方をしているのかもしれない。ひょっとしたら、通常の折り図が、将来は学研方式に取って代わられることもあるかもしれないし、あるいはあっさり学研方式が淘汰されるかもしれない。もしくは２つの方式がそれぞれ対立したまま存続するかもしれないし、逆にうまく双方が補い合いつつ共存するようになるかもしれない。
学研方式がどのように評価されるか。これは実際に読者の声が集まるまでわからない。何事も検証してみないことには何とも言えない（もっとも、よりにもよってまつもと作品で実験するこたぁないんじゃないかとも思うが…）。
今後どうなるか、は要注目である。

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