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おりがみ恐竜博-その2 [折り紙]

折り図そのものについては既に長々とあれこれ書いてみたので、他にも細かい誤謬は所々にあるにはあるが、ザックリ省いて。


折る対象について十分に研究する必要性があると言及した折り紙本というのは無いわけではなかったが、折る前に骨格から復元するステップがあると明言した本というのは、さすがに初めてなんじゃないだろうか。

生物系の人に作品を見せて意見を伺って、あっさり「全然ダメ」とリジェクト食らうという経験を持った折り紙屋というのはあまりいないだろうと思う。が、にしても、ちょっと分かっていなさすぎると感じる作品も少なくない。
「特徴をとらえながら、どこを強調するかがポイント」というのも、当たり前のようだが、これを的確に捉えるのは簡単ではない。いや、そこじゃねぇだろ、と思わず突っ込まずにおれない作品というのも、やはり少なくはない。

数理的な研究に偏重せず、対象そのものに対する研究や、もっとアカデミックに芸術をやってる人、そういう人たちがザクザク参入して、盛大にひっくり返してくれるようになるか否か、これは今後の折り紙がどうなるかを左右するところなんじゃないかなぁ、と思うんだがどうなんだろう(そうなれば私もサクッと淘汰されるだろうが、面白くなるには違いない)。


ちなみに、本文中で明言されていないが、ここに描かれている復元画は全てまつもとさんの手によるものである。当人曰く「復元イラストは下手だから見ちゃダメ」とのことだが、そりゃ、あるのだから見てしまう(笑)。

このような一件何気ない復元イラストも、たとえばトリケラトプスの前肢がどのような角度で関節していたか、なんていう研究を踏まえて描かれていたりする。そういうところを見逃して表面だけ追っかけていると、いずれ破綻してしまうので注意が必要である。論文や本にある復元図をただ立体化すればよいというものでは決してない(一口に復元図と言っても様々なクオリティーのものがあるが、基本的にはイメージを掴みやすくするための便宜的なもの。意図的に復元図を忠実に立体化するというのもあるが、あくまでそれはそれとして狙ったものなので別の話)。

アンキロサウルスの復元に際しては、おなじみKenneth Carpenter氏がちょっと見たこと無い配列パターンの装甲の復元をしていて、うわぁ、これはなんなんですか!?と動揺したりと、それはいろいろとあって面白かった。
さすがに脇腹がトゲトゲになっている「何十年前の復元だよ!」というアンキロサウルスを折る人はもうないだろうが、まだまだどう変化していくか、目が離せない。骨や関節の仕方も分からなければならないし、どのような復元が妥当か(たとえ科学的でないにしても)判断できなければならない。とにかく常にスリリングでやめられない。このへんを楽しめるような人でないと、なかなか古生物造形はできないんではないだろうか。

さて、せっかくなので始祖鳥についても極々軽く。
と言ってもこれがまた分からないこと分からないこと。
風切羽はHeilmann 1926 をベースに、よく分からない中雨覆の配列パターンは現生鳥類に多く見られるタイプを参考に。さぁ、復元画をよく見てみよう。
Mayr et al. 2005 で第1趾が他と対向していない(ざっくり言うと皆前趾足)という話が出たわけだが、標本の写真(たとえばFrickhinger. 1999, Der Solnhofener Plattenkalk und seine Fossilien)を見る限りモロに対向している(ざっくり言うと三前趾足)わけで、実際のところどうんだろう、と悩まずにはおれない。Chiappe 2007 をふふーんと読んでみると、「三前趾足みたいだけど最近の研究から第1趾はそんなに後ろに回転してないみたいで、どうもまだちゃんとはパーチに適応してないみたいよ(←危険なくらいざっくり言うと)」ってな具合になっている。だもんで、どうなんだろう、と思いつつも、無難に間をとって第1趾は前でも後ろでもなく内側に向けて復元している。さぁ、復元画をよく見てみよう。
全体の姿勢や体羽の具合は「私の感覚で自然に感じる」ような姿に調整されている。下書き段階で、ここをもうちょっとボリュームアップ、とか、この角度が云々、と五月蠅く注文を付けていたのには、さすがにまつもとさんも相当に鬱陶しかったのではないかと思う。
こういった点を自力で読み取って、ニヤッと笑えるようになると、もうこっちの世界の住人である(笑)。

そんな、折り紙以外の部分も楽しい「おりがみ恐竜博」である。


Chiappe, L. M., The Glorified Dinosaurs: Origins & Early Evolution of Birds. Wiley-Liss. 2007

Frickhinger, K. A., Die Fossilien von Solnhofen, 2 Bde.Goldschneck Verlag. 1999 (邦訳版 ゾルンホーフェン化石図譜 (2). 朝倉書店. 小畠郁生 監訳)

Heilmann, G., Origin of Birds. Witherby. 1926

Mayr, G., Pohl. B., Peters, D. S., A well-preserved Archaeopteryx specimen with theropod features. Science 310 (5753), 1483-6 (2005)

The Glorified Dinosaurs: Origins & Early Evolution of Birds

ゾルンホーフェン化石図譜 (2)


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